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しつけ

 五才のかわいい坊やがいました。温かい両親の間に育てられ、すくすくと成長しています。

 五才になった時、そろそろ、しつけをしなければと、両親は相談をしました。食事の仕方、挨拶の仕方、そしてお手伝いと、いろいろと身につけてほしいのです。

 その中で、お手伝いは、食べた後の食器を流し台まで運ぶこととお父さんが、朝会社へ出かける時の靴磨きを坊やの仕事としました。

 素直な坊やは、喜んでお手伝いをします。特に、靴磨きの時は楽しみです。お父さんが、とても嬉しそうな顔をして褒めてくれます。それだけではありません。十円をくれるのです。

 そんなある日、お母さんが、家計簿を開いて、「お金が足りない、お金が足りない」と言っているのです。そばにいた坊やは、玄関に行き、自分の靴を持ってきて、お母さんの前に突き出したのです。お母さんは何のことか解りません。

 「どうしたの?」

 坊やの左手には十円がのっていました。

 「お母ちゃん、お金いるんやろ。ポクの靴磨かしてあげる」

 と、言ったのです。


 人間にとって『しつけ』や教育は大切です。これがなされてこそ、人間は人間になることが出来ます。しかし、何をどのようにしつけ、教育するかによって、その人の一生が決まると言っても過言ではありません。

 この坊やの両親は、お手伝い=(働く、生活共同分担)を教えようとしました。これはこれとして大切なことです。しかし、もっと大切なこと、『心』を教えることに気がつきませんでした。

 働くという根本の『心』に、人の役に立つこと、生きている、生かされていることへの『お礼』、『証』としての、『働く』があるということです。

 条件や報酬によって働くのではなく、五体満足にこの世に生を受けていることへの喜び、働くことの出来る喜びを坊やに教えるべきです。この生き方が身につくと、この坊やは成人するに従い、無限の可能性を持った働きができるようになるでしょう。条件や報酬によっての働きでは、狭い小さな人間になってしまうでしょう。

『よかれ』と思ってしていることに、間違いが多くあります。

(H3.8.31 一般配布124号)




10−13=?

 小学校で算数を習います。最初に『たし算』、次に、『ひき算』です。『ひき算』では、(10−7=3)と習い、(10−13=?)では、『小さい数から大きい数は引けません』と教えてもらいます。

 中高生になると(10−13=−3)と、負の数字を習いますが、本当は『小さい数から大きい数は引けません』が正しいように思われます。

 収入が二十万円である人が、二十五万円の生活が出来るわけがないのです。ところが、ローンやカードでそれが出来るから不思議です。しかし、本当にそれが出来ているのでしょうか?

 (20−25=−5)、誰でも分かる算数です。『−5』は負の数として、自身に残ってきます。ローン会社やカード会社が立替えてくれているだけです。それも、利子をつけてです。結局、『−5』は自身が支払いをせねばなりません。それも利子をつけてです。

 確かにローンやカードは便利なものです。今月はニ十五万円使っても、来月に五万円を返せばいいという計算になりますが、ここが危ないのです。来月は(20−5=15)となり、十五万円で生活をしなくてはなりません。今月がニ十五万円の生活をして、来月が十五万円の生活など出来る訳がありません。生活はいったん膨張すると、引締めるのは大変に難しいものです。来月もニ十五万円の生活をしてしまうものです。美味しい味を覚えると、まずいものは食べられません。

 ここに人生の落とし穴があるのです。足らずの十万円をローン会社やサラ金で借ります。すると、来月は十万円の借金となるのです。二ヵ月目は十五万円の借金となり、三ヵ月目で収入の全てであるニ十万円が借金となり、生活が出来ません。

 やはり、小学校で習った『小さい数から大きい数は引けません』が正しいようです。この簡単なことがなかなか分かりにくいものです。それは、人間の『欲・見栄』が分かりにくくしています。いや、現代の社会が、人間としての大切な生き方を見失しなわせているのでしょう。

 人間の価値は『働き』と『豊かな心』にあります。『働き』=『労働』と考えますが、『労働』のみが『働き』ではありません。

 親としての働き、家族としての働き、社会人としての働き、即ち、どれほどお役に立てるかが、その人の価値となります。また、心はいくらでも大きく、豊かになっていくものです。その心によって、人を包み、人を愛し、人を生かすことができます。そこに、人間が人間としての価値があります。


 誰しもが、豊かな人生を送りたいと願います。『欲・見栄』、安易な生き方によって、身を破滅させるようなことのないように、気をつけたいものです。

(H3.11.27 一般配布127号)

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